Q&A集:糖尿病だとなぜ脳梗塞を発症しやすいのですか?


question糖尿病だとなぜ脳梗塞を発症しやすいのですか?


answer
ドクター糖尿病は多くの合併症を引き起こしますが、その中でも重い脳卒中はただちに生命の危険が生じる恐ろしい合併症です。

まず、脳卒中(脳血管障害)から説明します。脳卒中(脳血管障害)は大きく2つに分けることができます。

出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血)・・・血管が破れて起こる。

虚血性脳卒中(脳梗塞 全体の約75%)・・・血管に凝固した血液が詰まって起こる。

この中で糖尿病患者が高い確率で発症するのが脳梗塞です。日本人で脳梗塞を発症する人の1/2は糖尿病患者です。脳梗塞を起こす危険因子としては、加齢、高血圧、脂質異常、耐糖能異常、遺伝、喫煙、ストレスなどがあります。糖尿病患者は、既に高血圧と脂質異常を持っている場合が多く、そこに肥満や高血糖などが重なることで更にリスクが高まります。これらの要因はいずれも動脈硬化を促進させる方向で作用するので、糖尿病患者は高い確率で脳梗塞を発症してしまうのです。

脳梗塞を起こすと、血液がその先に流れなくなるため、ふさがった血管の周囲の脳には栄養分や酸素が供給されなくなり、数分で脳組織が壊死(えし)を起こします。いったん死んでしまった脳細胞は二度と回復することはないので、その部分の脳が受け持っていた働きが失われ、運動や言語に障害が残ることがあります。
図解-ラクナ梗塞


糖尿病患者は1回の脳梗塞で意識を失ったり、大きな後遺症を残すことは少ないものの、脳の中で小さな梗塞を繰り返す傾向があります。これを多発性ラクナ梗塞といいます。ラクナ梗塞は、大きな梗塞にはなりませんが、脳の深いところにある細い血管で頻繁に発生します。ラクナ梗塞で脳細胞が少しずつ死んでいくと、体の麻痺だけでなく、やがて脳血管性認知症を引き起こすことも知られています。

また、一時的にろれつが回らなくなったりする一過性脳虚血発作と呼ばれるものがあります。これは一時的なもので再び血液が流れると症状はなくなりますが、一過性脳虚血発作を起こした人は、10%が1年以内に、約30%が5年以内に大きな脳梗塞を発症するというデータがあるので要注意です。

脳梗塞を起こさないためには、まずは血糖をコントロールをして糖尿病の進行をとめることです。加齢や遺伝は予防することはできませんが、高血圧、肥満、脂質異常などの危険因子を一つずつ取り除くことが動脈硬化を防ぎ、ひいては脳梗塞の予防につながります。また、定期的にCTやMRIなどの画像診断を受けることも有効です。



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